美容室の経営
独立したものの、美容室の経営がうまくいかずに悩まれている美容師の方は本当に多いです。そして、美容室の経営改善には、他の一般的な会社とは違う難しさがあります。
この記事では、「なぜ美容室の経営が難しいのか」や「美容室の経営を改善させる為には、どうすれば良いのか」といった質問に回答します。
美容室業界の経営環境
美容室の経営を考える上では、まず、美容室業界が置かれた経営環境を理解しておくべきです。
美容室の店舗数と顧客数の推移
美容室の数は、一貫して増え続けています。
平成30年の時点で、美容室(統計上は、美容所)の数は251,140施設ですが、平成20年の時点では221,394施設でした。平成10年まで遡ると、201,379施設でした(データは、厚生労働省平成30年度衛生行政報告例より)。
すなわち、20年前と比べると約25%も美容室は増えているのです。そして、この増加傾向は継続しています。
前述の施設数には、アクティブに活動していない美容室も含まれているでしょう。しかし、総数が増加しているという事は、その増加数以上の美容室が「新規に開業している」と考えて間違いありません。
そして、その一方、日本の人口は増えていません。これは、美容室業界における「お客様の総数」が増えていない事を意味します。
※実際には、もう少し複雑に考えるべきですが、大きなトレンドとしては、これ位の理解で問題ありません。
基本的な美容室の経営環境
これらの事実から言える事は、「単純計算した場合、美容室1店あたりの顧客数は減少している」という事になります。
すなわち、美容室業界においては、「増えないお客様を、増加し続ける美容室が取り合っている」という状態が続いているのです。
ですから、「以前と同じ事をやっているのに、売上が減少している」としても、それは不思議なことではないのです。もちろん、「新規顧客の獲得が難しくなっている」という事についても同じです。
業界によっては、「以前と同じ事をやっている」だけでも「経営が改善する」可能性のある所もあります。しかし、美容室業界は、「努力をしないと、経営は改善しない」業界であるといえます。
まず、これらの点を、美容室の経営に考える上での「基本」として認識しておくべきです。
美容室経営がうまくいかない3つの理由
美容室経営がうまくいかないのには、3つの共通した理由があります。
激しい競争状態
前述の通り、美容室の経営環境は楽なものではありません。数字だけを見れば、「毎年、経営環境が厳しくなっている」とすら言えます。
新しく出来る店舗の競争力が貴方の店舗よりも圧倒的に低く、「自店舗の競争相手にすらならない」のであれば良いのですが、そうで無い限り、自店舗の運営には必ず影響が出ます。
乱暴に言ってしまえば、「美容室の新規開店がある分、自店舗の顧客数が減っていくのは当然」ですらある訳です。
また、同じ理由により、「新規の顧客を獲得する難易度も上がり続けている」という事になります。
コスト上昇傾向
顧客維持や顧客獲得が難しくても、経費が削減出来れば、経営状態は維持出来る可能性があります。しかし、美容室の業界においては、それも許されません。
基本的な「物価や人件費の上昇」に加え、「競争力を維持する為の出費が増える」傾向にあるのです。
いわゆる「集客の為のメディア掲載費用」や「設備投資費用」です。
新規顧客の多くは、「美容室を紹介するメディア」で美容室を調べます。また、「その店が作成しているホームページ」などを見て、店の評価をします。ですから、こういった所にお金がかかる時代になっています。
また、設備投資も欠かせません。他店よりも設備が古いと、顧客を逃す事にもなりかねません。
なかなか売上が増えない中で、こうした経費の増加傾向は、経営を更に圧迫します。
経営人材の欠如
そして、一部の大手企業を除いて、美容室の運営側には、「経営を真面目に勉強した事がある人材」がいません。
この為、ほとんどの美容室では、他の業界で当たり前のように行われている「経営改善の為の分析・対応」が適切に行えていません。それどころか、そもそも、そのような活動に真剣に取り組んでいる美容室すら多くありません。
経営に詳しい人材がいない美容室にとって、そのような活動の難易度は低いものではないでしょう。しかし、経営環境が悪化し続けている以上、美容室の経営を改善する為には「営業中の努力とは別の努力」も必要になります。
そのような活動が行えていない美容室の経営状態が悪化しているのは、当然とも言えるのです。
貴方の美容室の経営状態を改善する方法
では、どのようにすれば、貴方の美容室の経営は改善するのでしょうか。その方法について解説します。
顧客に選ばれる必要性
貴方の美容室の経営がうまくいっていないのであれば、貴方の美容室には、「必要な数の顧客を獲得できていない」という状況が発生しています。
そして、その状況は、「美容室を探している人に候補にして貰えなかった」「他の美容室と比べた時に選んで貰えなかった」「通い続ける美容室として選んで貰えなかった」「高額なメニューを頼みたい美容室だとは思って貰えなかった」など、様々な段階で貴方の美容室が「選ばれなかった」という事が起きた結果です。
ですから、貴方が現状を改善したいのであれば、その「選ばれていない理由」に対応し、「選ばれるようになる」必要があります。
逆に言えば、「選ばれない理由」にさえ適切に対応できれば、貴方の美容室は選ばれるようになり、貴方の美容室の経営状態は改善します。
貴方の美容室の経営改善に必要な事は、実はシンプルなのです。
経営改善の為の正しい道順
この為、貴方の美容室の経営を改善する為の作業は、「貴方の美容室が選ばれていない理由を把握する」という所から始まります。
念のために強調しておきますが、美容室が「選ばれていない理由」は、それぞれの美容室によって異なります。同じように見える美容室同士であっても、「選ばれない理由」が違う事は珍しくありません。
そして、「選ばれない理由」が異なれば、「実行すべき対策」の方向性も異なります。
深く考える事なく、売上アップに繋がりそうな対策をやみくもに実行したり、高額な集客サービスを契約したりする美容室もあります。しかし、その美容室が抱えている問題に合った対策を実行しなくては効果は上がりません。それどころか、的外れな対策は、状況を悪化させる事もあります。
正しく理解されていない方もいらっしゃるのですが、経営改善を実現させる為には、正しい方向性で努力する必要があります。どれだけ努力しても、努力する方向が間違っていれば、結果は出ないのです。
貴方が本当に経営を改善させたいのであれば、まずは、「貴方の美容室が選ばれていない理由を把握する」という作業にしっかりと取り組むようにして下さい。それが、結局は近道となります。
顧客から選ばれる為に必要なこと
そして、「なぜ貴方の美容室が選ばれていないのか」という事が把握できた後には、「その理由を解消する為に何を行うべきなのか」という事を考える必要があります。すなわち、「貴方の美容室が選ばれるようになる為の具体的な対策」を導き出す必要があります。
経営がうまくいっていない美容室の経営者からは、「どうすれば選ばれるようになるのか解らない」といった声も聞きます。しかし、「選ばれるようになる」為に必要なことは、実はそれほど複雑ではありません。
美容室が選ばれる為には、顧客から「この美容室は、自分のニーズを満たしている」や「この美容室になら、お金を使っても良い」などと思われる必要があります。
そして、そのように思われる為には、顧客に「この美容室は、他の美容室とは違う」と認識され、更に、「自分には、この美容室が一番合っている」と感じて貰う事が大切です。それさえ出来れば、「顧客に選ばれる美容室」になる事ができます。
狙う顧客を定める重要性
ただし、全ての人に「自分には、この美容室が合っている」と感じて貰う事は困難です。
ですから、貴方の美容室が選ばれるようになる為には、まず、美容室の側で「どのような顧客に選んで貰いたいのか」という事をしっかりと定め、その狙った顧客からは「自分に合っている」と確実に思って貰えるような美容室を目指すべきです。
「選ばれるようになる為の対策を絞り込めない」や「何をやっても選ばれない」と感じている経営者は、この点についての理解が不足しているケースが多いと言えます。
顧客に選ばれるようになる為には、他の美容室とは違う方向性で努力する事が大切です。自分の美容室だけの方向性を定めることなく努力しても、他の美容室と差を付ける事は難しく、「選ばれる美容室」になる事は困難なのです。
その鍵となるのが、「貴方の美容室は、どのような顧客を狙うのか」という方向性です。そして、その方向性さえ正しく定まれば、「実行すべき対策」を導き出したり、その対策を実行したりする難易度は高くはない事が一般的です。
ですから、ここまでの作業さえ適切に行う事が出来れば、貴方の美容室の経営が改善できる可能性は十分にあります。
選ばれていない理由についての把握
作業を進める上では、何点か注意して頂きたい点があります。
まず、「自分の美容室が選ばれていない理由を、自分は正しく把握できているのか」という事については、しっかりと確認した上で作業を進めるようにして下さい。
「選ばれていない理由」についての理解が間違っていたり、不十分であったりした場合、全ての検討は間違った方向に進んでしまいます。
貴方に自信が無い場合はもちろんですが、自分としては理由を把握できているつもりであっても、「その理由さえ解消できれば、自分の美容室の経営は改善する」という事を、根拠と共に説明できない場合、貴方の理解は不十分である可能性が高いでしょう。
そのような場合には、貴方は一度立ち止まり、「自分の美容室が選ばれていない理由」を正確に把握する為の「作業の段取り」をするようにして下さい。
このまま通常の営業を続けているだけでは、「選ばれていない理由が解るようにはならない」と考えるべきです。
実行する対策が満たしているべき条件
また、「実行しようとしている対策が、本当に適切なのかどうか」という事にも注意するようにして下さい。
前述の通り、貴方の美容室が「目指すべき方向性」は、他の美容室とは異なっているべきです。ですから、貴方の美容室が実行する対策は、他の美容室の動向を十分に踏まえた上で導き出されているべきです。
また、「実行する対策」を絞り込む上では、「貴方の美容室」や「貴方の美容室が置かれた環境」についての分析も必要となります。
当たり前の事ではあるのですが、「実行する対策」は「貴方の美容室に合っている(実行が十分に可能である)」内容であるべきですし、「実行によって、十分な効果が期待できる」ものである必要もあります。
正しそうに見える対策であっても、「貴方の美容室にとって、実行の難易度が高い」ようでは、対策は失敗してしまいます。また、「実行しても、十分な効果が出ないような内容」の対策であれば、実行しても結果は出ません。
ですから、「実行しようとしている対策が、これらの条件を満たしているかどうか」という事については、実行前にしっかりと確認するようにして下さい。そして、条件を満たしていない可能性がある場合には、適切な分析を追加で行った上で、対策を考え直すようにして下さい。
努力が報われない美容室がある理由
ここまでお読み頂いた貴方には、「経営が改善しない美容室が存在する理由」が良くご理解頂けているのではないでしょうか。
まず、美容室の経営を改善する為には、「通常の営業中の努力」だけでは不十分です。そして、経営改善の作業を進めていく上では、「必要となる作業の段取り」を行う必要があります。また、「様々な分析」を行う必要もあります。
しかし、そのような作業が出来る人材が美容室にいる事は極めて稀なのです。
多くの美容室では、「どのように作業を進めていけば良いのか」という事を考える時点で、経営改善の作業が止まってしまいます。また、何らかの対策を導き出したとしても、「その対策で結果を出せるのか」という事を正しく判断する事が出来ません。
良く誤解されているのですが、美容室の経営改善が失敗するのは、「対策の実行」が難しいからではありません。それ以前の作業の段階で失敗してしまっているからなのです。
具体的な改善の為の行動
もちろん、美容師は専門性の高い職業です。この為、経営改善に必要な専門知識や経験を持った人材が美容室にいないのは仕方の無い事でしょう。しかし、そのような状態で経営改善に取り組むのは、やはり危険です。
ですから、もし、貴方の美容室にも経営に詳しい人材がいない場合には、これらの作業は経営に詳しい人材(専門家)に相談しながら行うようにして下さい。
世の中には、専門知識を持っていないと、うまく作業が出来ない領域が多々あります。美容を例にすれば、カットが終わった後の「日常のスタイリング」については、素人でもある程度は出来るでしょう。しかし、カット自体を素人が行う事には限界があります。それと同じと考えて下さい。
貴方は、「髪型を変える事で人生を良くしたい」と希望している人を見かけた場合、「ちゃんとした美容室に行った方が良いよ」とアドバイスするのではないでしょうか。それと同じように、必要な知識や経験が無いのであれば、貴方は、それを持つ専門家を活用すべきなのです。
※相談できる適切な相手がいない場合の対応については、この記事の最後で触れます。
専門家を活用した場合の事例
なお、参考にして頂く為に、当社で美容室の経営改善をお手伝いさせて頂く場合の流れについても、ご紹介しておきます。
当社で美容室の経営改善をお手伝いさせて頂く場合には、まず、当社オリジナルの「需要分析」「競合分析」「自店舗の価値分析」などの手法を組み合わせて現状分析を行い、「なぜ、その美容室が選ばれていないのか」を明らかにします。そして、その結果を活用して、「その美容室が狙うべき顧客」を絞り込みます。
その上で、その「狙うべき顧客」を獲得する為に有効な「具体的な対策」を提案させて頂きます。もちろん、実際に実行する事になる対策については、美容室の経営者と十分に話し合いをさせて頂き、無理なく実行できる内容に落とし込みます。その後、対策実行中のフォローもさせて頂きます。
実行しながらの修正は必要となりますが、狙った顧客から選ばれる為の対策を講じている訳ですから、対策が実を結ぶにつれて、顧客からは選ばれるようになります。その結果、美容室の経営改善は実現していきます。
美容室の経営改善が成功する理由
ここまで難しい話が続きましたが、実は、「美容室の経営改善は成功しやすい」と言えます。
美容室の経営改善が恵まれているのは、競合店舗も「経営に弱い所ばかり」である事です。この為、自店舗が真剣に「改善の為の作業」を始めれば、結果は出やすいのです。
ですから、今、貴方が美容室の経営について悩まれているのであれば、すぐにでも、改善の為の作業に取りかかって下さい。必ず、結果に繋がる事でしょう。
ただし、前述の通り、「美容室の現場だけで、改善を実現させるのは難しい」という点には注意をするようにして下さい。繰り返しになりますが、この点で失敗しない為に、これから作業を始める方には、外部の専門家に相談しながら作業を行う事を強くお勧めします。
もちろん、「外部の専門家に相談するのはハードルが高い」と感じる方がいらっしゃるのは理解しています。しかし、結果を出せる体制で動き出さないと、現状は改善出来ません。
少し計算して頂ければ解るはずですが、毎日の顧客が少し増えるだけでも、貴方の美容室の経営は大幅に改善されるはずです。それを踏まえると、「相談をためらっている時間がもったいない」と感じて頂けるはずです。勇気を出して、現状を改善する為の一歩を踏み出すようにして下さい。
この記事をきっかけに、一店舗でも多くの美容室が経営改善に成功される事を願っております。
なお、相談できる専門家が身近にいない場合には、当社でも経営相談を承っております。無料相談の受付期間中に限りますが、他の美容室の事例も踏まえ、貴方の美容室に合った「作業の進め方」や「気をつけるべき点」についてのアドバイスを無料で差し上げています。自分達だけで作業を進めるのが不安な方は、それらのアドバイスだけでも受けた上で、作業に取り組むようにして下さい。詳しくは、以下から案内をご確認下さい。
最終更新日:2021年11月18日